第2回市民会議「米子市公会堂の設計者・村野藤吾再発見」講演会

「米子市公会堂の設計者・村野藤吾再発見」講演会
講演者 石田潤一郎先生 建築史家 京都工芸繊維大学大学院教授
2010年7月19日 14時〜 米子市公会堂集会室

石田潤一郎先生

建築家・村野藤吾の一般的イメージ

・教条的モダニズムへの批判者(モダニズム建築は装飾を排して合理的でシンプルな建築を目指す)
・華麗なテクニシャン(装飾的な村野建築では、特に華麗なデザインを巧みなテクニックで実現する)
・商業建築で真価(デパートやホテル、劇場など、商業建築で村野独特の装飾が大衆に対して価値を持つ)

一般的イメージと異なる村野藤吾の一面

(1)「歴史様式」と「新興建築」双方を批判する
・渡辺節事務所時代は歴史様式建築の社会的価値を痛感、しかし折衷主義建築にも不満
・大衆に支持される新興建築の希求(アメリカのモダンデザインなど)
・表現の多様性の許容(ストックホルム市庁舎やオランダのファンネレーによるたばこ工場)

(2)即物性とダイナミズムへの関心
・ロシア構成主義への関心(チェルニホフ「建築ファンタジー」の翻訳) ⇒ダイナミックなキャンティレバーは米子市公会堂のファサードにも影響?
・工業性の表現(打ち放しコンクリートやアルキャスト、ブロック、金属板) ⇒打ち放しコンクリートやガラスブロックな米子市ど公会堂にも使用

(3)権威性を持たない「公共」の表現
・市庁舎建築における「公衆室」的空間の設置(横浜市庁舎の広間など)
・様式性によらないモニュメント性の模索(大庄村役場のレリーフや宇部市民館の柱頭や天井飾り)
・「経済性」を離れた評価への期待(横浜市や尼崎市庁舎のファサードデザイン)

(4)米子市公会堂の村野藤吾の足跡を通して評価する
・村野作品は相反する要素を共存させることで、新鮮で緊張感のある表現を生む(被膜性と構築性、工芸性と抽象性、消費性と永続性など)
・前者の要素が主に村野らしいと評価。しかし、後者もまた村野藤吾にとって重要な要素。
・米子市公会堂こそは、そのすぐれて典型的な作品。

外部リンク

  1. ドはドングリのド −米子市公会堂の存廃問題をまとめたコースケのブログ
  2. Double Espresso−米子市公会堂の存廃問題をまとめたlancisctaさんのブログ